【防災特集】災害を自分事に 防災を考えよう①

関東大地震から100年。発生日の9月1日は「防災の日」と定められ、わが国の災害対策の出発点となりました。
いつ起こるか分からない災害を他人事ではなく、自分事と考える機会として、いま一度、防災対策を確認してみましょう。

突然の災害に対し、日々の備えはできていますか? いざという時に対応できるよう、一宮防災ボランティアネットワーク(※)の会長で防災士の伊藤善之さんに、心構えや最低限準備しておきたい対策を伺いました。

自分と家族を守る 「家具にも備えを」

「南海トラフ地震が起こる確率は、30年以内に70%、50年で90%といわれています。明日にも起こるかもしれない地震に備え、普段から準備しておくことは何より大切です」と伊藤さん。地震が起きた際、気をつけることの一つに「家具の転倒・落下」が挙げられます。阪神・淡路大震災や新潟中越地震などでは、倒れてきた家具で死傷した方も少なくありません。伊藤さんは「古い家ほど家具固定は必須です。過去には一軒で20カ所固定したことも。家具は震度5強で倒れる可能性が高いだけに、今すぐ見直しを」と呼びかけます。

「寝ている時に家具が倒れてこないか」「逃げ道をふさがないか」など、自分の家の家具はどうなっているかチェックしましょう。

家具転倒防止のポイント

●家具の配置を工夫する
●本棚やタンス、冷蔵庫など(高さ1.5m以上が目安)
・壁、柱に直接固定する。💡最も効果的なのは、L字型金具で固定すること!
※事前に下地(間柱・胴縁)の確認が必要。(針を刺して探す道具などが必要に)

・賃貸住宅など壁に穴があけられない住まいは、突っ張り棒で固定を。
※天井に強度がない場合、天井側に補強板を入れて固定します。突っ張り棒の下部板を家具にビスで留めることも大事。
●窓や棚のガラスなど
 飛散防止フィルムを貼る。ガラスが割れてケガをするリスクが減らせます。
●観音開きの戸棚
 取っ手に引っ掛けるタイプや揺れを感知してロックする器具などの利用を。

一宮市では、市内在住の方を対象に、家具固定のお手伝いを毎年4月~翌年2月まで実施しています。事前調査から器具取付まで工事費無料(金具代は依頼者負担)。問い合わせは☎090(4794)8863伊藤さんへ。

在宅避難という選択も

避難所は、自宅に住めない状況になった方が一定期間生活する場所。そのため、自宅が居住可能であれば「在宅避難」がベストです。在宅避難を前提として、対策を考えておきましょう。また、その前に自分の家が地震の揺れに強い建物なのかを耐震診断で確認したり、場合によっては耐震補強を行う必要もあります。

ここでは、防災対策が未実施の方や、在宅避難を見据えた方のため最低限の備えを紹介します。

まずはここから準備

●室内の安全確保
 家具の配置や固定など。

●水・食料の備蓄
 水も食料も、家族の人数分×1人最低3日分。大規模災害の場合は、1週間分必要となります。
●カセットコンロ、ガスボンベ
 ガスや電気が止まる可能性を考えて、調理するために備えておきましょう。


●トイレへの対策
 災害時の断水や排水管の破裂などに備えて、自宅の便器が破損していなければ、ゴミ袋などを活用した簡易トイレの準備をしておくと安心です。
《簡易トイレの作り方》
便座を上げ、ビニール袋(1枚目)をかぶせる。便座を下ろして、その上にビニール袋(2枚目)をかぶせ、排泄後に凝固剤を入れます(商品の仕様書を参考に)。2枚目の袋を外し、空気を抜いてしっかり縛る。
※可燃ごみとして出すため、凝固剤での処理が必要。凝固剤は1週間分×人数分を。併せてトイレットペーパーの準備も忘れずに。

●過去の災害を知る
 いつ、どこで、どのような災害が起こったのか、過去の教訓から学ぶことで、防災を考えるヒントにも。

 そのほか、停電時のライトやウエットティッシュなどの衛生用品の備蓄。手洗いや食器類の洗浄、トイレが使用可能な場合、使う生活用水は、風呂の水や、水道水を入れたポリタンクなどで準備します。

避難所の運営と自主防災組織の編成も課題

幸い一宮市では近年、大きな災害に見舞われることなく過ごせてきました。しかし、災害への対策をおろそかにはできません。
こうしたなか、自主防災組織の作り方の勉強会や、防災訓練で避難所開設訓練を取り入れる自治体も増えていると伊藤さん。「災害時の避難所は、地域住民が主体となるため、自主防災組織の存在がかなり重要になります。町内会の自主防災組織で防災訓練を行い、いざという時に避難所運営が円滑に進むようにするのが今後の課題となります。また、災害時は若い力が頼りになるだけに、必要な知識や心構え、団体や組織のことも若い世代に伝えていきたい」と語っていました。

※一宮防災ボランティアネットワーク
あいち防災リーダー会一宮支部、一宮防災VCネット、尾西防災ボランティアサークルの会からなる防災団体。行政との窓口をはじめ、連区・町内会の防災訓練や防災勉強会の支援、避難所運営リーダー研修、災害時の避難所運営の支援、家具転倒防止支援など、防災減災活動を担う。メンバーは90人ほど。